2008年12月20日

『近代国家成立の歴史』10 近代国家の理論的根拠=社会契約説とは、何だったのか?

前回は、 『近代国家成立の歴史』9 金貸しが支配するイギリス帝国へを掲載しました。

今回は、『近代国家成立の歴史』10 近代国家の理論的根拠=社会契約説とは、何だったのか?

を考えてみたいと思います。

この社会契約説の登場は、近代国家成立を考えていく上で、一つの大きなターニングポイントとなります。

なぜなら、これら社会契約説の中で提示された理論が、その後の革命の思想的な拠り所とされ、新たな国家建設へと様々な形で引用されていくからです。

社会・国家というものは、それを構成する個人相互間の、自由意志に基づく契約によって成立している(≒社会契約説)という考え方を、現在の私たちは常識のように受入れ、むしろそれは当然だと考えています。

しかし近代国家設立までの歴史的背景を見ていくと、それとは違った側面も実は浮き彫りになってくるのです。

それはいったい、何なのでしょうか?

少し時代を遡りながら、見ていきましょう。

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■力の序列原理に基づく武力支配国家

今から約5000年前に誕生した古代国家は、絶対的な力=武力による序列原理で統合された「武力支配国家」でした。

実態的な武力と、頂点に立つもの=国王自身が神であるという観念によって、支配体制は正当化されていたわけです。
しかし紀元3世紀の軍人皇帝時代になると、政治的混乱が続くようになります。

皇帝が次々に暗殺され、わずか33年の間に14の皇帝が擁立され平均で1,2年という僅かな帝位しか続かない皇帝が乱立します。

結果として皇帝の権威は失墜し、政治的不安定から『国家統合の危機』に直面していきます。

■宗教を利用し序列統合された国家へ

このような事態を打開するために利用されたのが、まさに「神≒宗教」でした。
3世紀後半には、古来ローマの神々を皇帝の守護神と仰ぎ、これによって皇帝権を神聖化する試みをはじめます。

4世紀になると、当時の大帝国ローマは庶民の間に急速に広まっていたキリスト教を国教とし、『キリスト教の神から皇帝に任命されているのだ』ということで皇位の正当性を獲得していきます。

教会のお墨付きによって国王になる訳ですから、当然宗教(教会)の力は拡大し続けていきます。
しかし、そうした宗教の力の拡大にも陰りが訪れます。
16世紀前半頃には、ヨーロッパ一円に(皇帝の任命権と言う形で)強い力を誇っていたローマ=カトリック教会ですが、同時に教会と結託した金貸し(ex.ハプスブルグ家、フッガー家)達が大きな力を持つようになります。(当時カトリック教会はこのフッガー家に対して莫大な借金を抱えています。)
さらに自らの権威象徴である教会建築にも費用がかさみ資金不足に陥った教会は、金貸しの強い勧めもあり、ドイツを中心に贖宥状(免罪符)を発行し、財政建て直しに掛かります。庶民が贖宥状(免罪符)を買う」ということは、その地域の金がローマ=カトリック教会に吸い取られていくことになり、ドイツは窮乏生活を強いられます。

■宗教改革に乗じた新たな金貸しの登場 → 市場拡大を前提とした商人国家の誕生

そこで立ち上がったのがルターでした。彼は、このような教会の腐敗を徹底的に糾弾します。

ルターによって贖宥状批判がなされたことをきっかけに、以前から指摘されていた教皇位の世俗化聖職者の堕落などへの信徒の不満と結びついて、宗教改革(1517)が各地に拡大していきます。
この「宗教改革」は、教会の権威失墜に加えて、新しい金貸し勢力(≒キリスト教新派閥=プロテスタント)の台頭を引き起こします。

このプロテスタント勢力は、新興勢力として力をつけ、とうとうオランダ(商人国家)という国を作り上げるまでになりました。

そのオランダ金融システム(と国王)を輸入したのがイギリスでした。

この時期は、大航海時代中期にあたりますが、ローマ=カトリック教会の支配が及んでいたポルトガルやスペインは没落し始め、教会支配から脱したオランダやイギリスが覇権を握った時代でもありました。

つまり、従来の「宗教という観念を共認させる事での序列統合」に限界が訪れ、「市場(とその住人である金貸し)を内部に取り込み、私権闘争の活力を維持することで統合する国家=商人国家」が登場するようになったのです。

■新たな国家理論=社会契約による国家創設へ
このように「力の序列原理に基づく武力支配国家」から「宗教を利用し序列統合された国家」,「市場拡大を前提とした商人国家」へと「国家」そのもののあり方が大きく変容してきたわけです。

「市場拡大を前提とした商人国家」とその隆盛をうけ、当時の思想家たち(ホッブズ、ロック、ルソー)は、既存の国家理論に変わる、新たな国家理論を模索します。

彼らが試みた国家理論の中心は、既存の国家が王権神授説に代表されるように神や古来からの慣習法に依拠していたことに対して、そういった神や古来からの慣習法に一切依拠することなしに新たな国家のあり方を説明することでした。
彼らは、個人と国家「社会契約」することによって生まれる国家こそ、正しい国家のあり方であるとし、三者三様に社会契約説を打ち立てます。

一見まったく異なることを提示している理論のように思えますが、大きくとらえれば、ホッブス/ロック/ルソーが語っている社会契約説は、実は個人の有する「権利」をどこまで認めるかによって があるだけだったのです。 
三者とも、個人の「権利=私権」の維持,拡大(≒市場拡大)を前提とした理論構成になっています。

つまり!

彼らが提示した社会契約説とは、私権拡大が閉ざされた序列統合社会から脱するための、

 『 市場社会と契約する理論 』 

だったのです!

次回はもう少し、彼らの思想がどんなものだったのかを詳細に見ていきたいと思います。

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※『近代国家成立の歴史』シリーズの過去ログです。

 『近代国家成立の歴史』1 はじめに ~市場拡大が第一の近代国家~

 『近代国家成立の歴史』2 国家と教会の結託 ~ローマ帝国を事例に検証する~

 『近代国家成立の歴史』3 教会支配の拡大と金貸しの台頭

 『近代国家成立の歴史』4 教会と結託した金貸し支配の拡大~宗教改革~

 『近代国家成立の歴史』5 国家と新しい商人の台頭 ~宗教改革~大航海時代~

 『近代国家成立の歴史』6 自治権を獲得したオランダ商人

 『近代国家成立の歴史』7 商人が国家をつくる

 『近代国家成立の歴史』8 オランダ商人が作った近代国家イギリス

 『近代国家成立の歴史』9 金貸しが支配するイギリス帝国へ

 『近代国家成立の歴史』10 近代国家の理論的根拠=社会契約説とは、何だったのか?

List    投稿者 d0020627 | 2008-12-20 | Posted in 08.近現代史と金貸し4 Comments » 

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コメント4件

 匿名 | 2009.04.07 19:36

国際交流などといっている人たちは、みんな中国にだまされているのですね。恐ろしいことです。

 ホシノ | 2009.04.07 20:59

私が住んでいる町は、国際化が進んでいます。といっても殆どアジア系です。中でも多いのが中国人。飲食店の従業員など中華料理店でなくとも、すし屋、牛丼屋、ファミレス、その他チェーン店も、レジから厨房まで中国人ばかりです。いつの間にか、日本人より外国人の人口が多くなっているかもしれません。

 norway hermes handbags | 2014.02.01 6:00

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