2008年10月07日

『近代国家成立の歴史』1 はじめに ~市場拡大が第一の近代国家~

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株価暴落・現物価格高騰や国家による借金の増大など、様々な「経済問題」が噴出しています。ここで、経済及び市場の問題を考える上で欠かせないのが、国家と市場の関係です。「国家」とは、何なのでしょうか?
現在の国家、つまり近代国家(と近代市場の関係)は、突然登場した訳ではありません。ある社会状況の下で、作り出されたものです。そして、現在の“アメリカ発金融危機”は、近代市場の末期的症状であると共に、近代国家の末期的症状でもあると言えそうです。グループで追求した議論を元に、シリーズ記事として、この『近代国家成立の歴史』を紐解いて行きます。今回は、その概要です。

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■国家と教会 教会と金貸し 国家と金貸し

今から約5000年前に誕生した古代国家は、「武力支配国家」と言われるように、絶対的な力=武力による序列原理で統合された国家です。実態的な武力と、頂点に立つもの=国王自身が神であるという観念によって、支配体制は正当化されていました。
しかし4世紀になって、当時の大帝国ローマは庶民の間に急速に広まっていたキリスト教を国教とします。抑圧された貧困層から発生した宗教を利用して、国家を再統合しようと試みます。
教会のお墨付きによって国王になる訳ですから、宗教(教会)の力が拡大し続けます。とうとう、宗教(教会)が国家を動かし戦争を引き起こします。これが十字軍遠征と言われるものです。この十字軍遠征では、教会だけでなく、徐々に力をつけていた商人の影響も見逃せません。実際、後期十字軍遠征では、ある特定地域の商人の利益供与をはかるためだけに十字軍遠征が行われました。結果、当時の大商人はローマ教会から自治権を獲得するほどの力を持つに至ります(ex.ヴェネチア共和国)。
古代国家誕生から中世にかけて、国王の任命権を得た教会は勢力を拡大し、その教会に寄生した商人の力が拡大していきました。
教会自身も政治体制の一部となり、勢力を拡大し始めます。この勢力争いの中で、教会も大量の金を必要とするため、商人から金を借りるようになっていきます。借金で首が回らなくなり始めた教会は、商人にそそのかされて、贖宥状(免罪符)を発行し、財政再建を計ります。

■商人が作り出した近代国家

贖宥状(免罪符)の大量発行など、教会が「金儲け」に乗り出すことで、金を巻き上げられ続けたドイツで教会批判(宗教改革)が起こります。ルターによる宗教改革は、プロテスタント(→ピューリタン)という新たな宗派を作り出し、ヨーロッパに広がっていきます。
このローマ=カトリック教会支配から離脱したピューリタントの中商人たち自身が、自主国家を造ります。こうしてできたのが、ネーデルランド共和国でした。商人自身が作った国家ということもあって、ネーデルランド共和国(オランダ)はわずかな軍事力しか持たなかったにも関わらず、当時のヨーロッパで強力な力を持つに至ります。最先端の造船技術と航海技術を用いて、世界各地に進出していきます。
この経済覇権国家オランダの影響を強く受けて、イギリスが力を付けていきます。このイギリス改革の主役となったのが、ピューリタントの中商人たちでした。彼らはイギリス国家に、自分たちを政治体制の一部として組み込むことを要求し続けます。これが二権分立→三権分立を成立させていきます。「国家権力の濫用を防ぐ」という名目で登場した「国家権力の分散」の実態とは、国家権力の一部を金貸しが運用できるようにした制度に他なりません。
名誉革命を成功させた彼らは、中央銀行を設立、通貨発行権を国家から奪います。通貨発行権を手に入れた中央銀行が、大量の金を市場に供給した結果、産業革命(技術革新)が起こり、イギリスは基軸通貨国としての地位を確立します。

市場拡大第一を前提にした近代国家の誕生

「商人による国家」を確立していく過程では、国家そのもののあり方が大きく変容しています。新しい国家像を支えたのが、当時の思想家たちでした。ホッブス→ロック→ルソーは、オランダ→イギリスの隆盛を見て、「国家権力を抑止し市場拡大に任せた方が国力が拡大する」という国家観を提示します。この三人は、自然法・自然権・自然状態を想定して、「社会契約」することによって形作られる国家こそ、正しい国家のあり方であるという理論を打ち立てます。
この中でもロックは、国家とは「神によって与えられた財産の所有権」を守るための権利を代表者(政府)に信託することで生まれるものであり、またその政府権力の濫用を防ぐために権力分立が必要であることを唱えます。
そして、この新しい国家観が次の国家を作ることになります。それが、アメリカでした。各人の所有権を最大限認めるロックの思想によって作られたアメリカは、市場拡大第一を前提にした人工的な国家だと言えます。この人工国家は、(生産という意味でも消費という意味でも)「新しい市場」を世界に提供し、以後、世界はアメリカを中心に動いていくことになります。
そして、アメリカ独立戦争・独立宣言はヨーロッパに逆輸入され、フランス革命→フランス人権宣言に受け継がれます。アメリカ独立やフランス革命によって登場した「近代国家」は、紆余曲折を経ながらも、全世界に広がっていきます。
このように、私たちが「近代国家」と呼んでいるものは、市場を維持・拡大するために登場し存在していると言っても過言ではないでしょう。明治維新後の日本政府がそうであったように、近代国家は市場拡大を第一に国力を増強させていきます。
今回の『金融危機』は、市場拡大第一を前提にした(人口)国家の末期的症状だとも捉えられます。破局の危機が叫ばれる中、それでも金融市場を何とか維持しようと矢継ぎ早に応急処置を繰り出す様は、かの国がいかに市場拡大を第一にしてきたかを象徴している現象です。
『近代国家成立の歴史』シリーズでは、現在の近代国家体制がどのように成立してきたのかを歴史経緯を元に読み解いていきます。(続く)
ないとう@なんで屋でした。
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List    投稿者 tnaito | 2008-10-07 | Posted in 08.近現代史と金貸し6 Comments » 

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コメント6件

 ようこそイサオプロダクトワールドへisao-pw | 2008.12.22 23:45

金武町米軍流弾事件の考察!

◆米軍流弾事件の考察◆画像はクリックで拡大します。◆M2重機関銃弾の到達距離◆沖

 米流時評 | 2008.12.23 15:08

ブッシュマン帝国最後の日々・Shoe must go on

   ||| ブッシュマン帝国最後の日々 |||
“The Last Daze of the Bushman Empire” …… Shoe…

 ブログ de なんで屋 @東京 | 2008.12.23 19:59

『大波乱の経済を振り返る☆』vol.5 本質に迫る!

みなさん、こんばんは。年末の経済特集も佳境に入ってまいりました。今日は、「今年の金融破綻は、何を意味するのか?」を切り口に、本質に迫ってみたいと思います。

 ななし | 2008.12.25 16:30

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つい最近まで金融を引き締めて市場から資金を吸収していた日銀とは丸で違うようですね。
そりゃ円高&デフレ不況になるはずです。
海の向こうの中銀はジャブジャブに供給、日本は逆に引き締めてるんですからね。
またそれを指摘し批判するマスコミもありませんでしたね。
この政府と中央銀行の政策の差が日米の大きな差なんでしょうね。
メディアや御用学者が言うように米国の方が対応が適切で大規模で素早いですから立ち直りも早いんでしょうね。
日本は逆噴射政策やってますからw
ようやく日銀は重い腰を上げてCP買い取りや金融緩和に踏み切るようですが、遅すぎますよね。

 yooten | 2008.12.25 21:06

さっそく日銀は、FRB金利ダウンによる円高状況に耐えられないと判断し、翌日、金利を引き下げましたね。
しかし、お金が増えたら物を買うのか?現在は、もともと貧困から脱出し物への収束力が下がっている状況の上に、金融破綻を契機に必要か否かの判断が働いています。
>このような単純なモデルで今回の金融危機を解決することが出来るのだろうか、たとえデフレを退治することが出来たとしても、その後正常な状態に戻すのは、はるかに難しい。<
私もそう思います。消費大国アメリカと日本では、意識の違いや変化に突っ込まないと先が読めないのでは?と思います。
また、FRB債をじゃぶじゃぶ発行する意図も「デフレスパイラル防止」とは別な理由が金貸しにはあると思います。

 Cheap Louis Vuitton UK | 2014.03.13 19:15

日本を守るのに右も左もない | 「ヘリコプター・ベン」の出番である

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